オズの国の歩き方コラム タイトル画像

注意:このコーナーは『オズの国の歩き方・本編』とはあんまり関係ありません。

第7回:黙して語らない男
ドロシー:
「さて、そんなわけで細かな修正が入りつづけたのはレオンなんだけど、実はジャックにも大きな変更がありました」

ジャック:
「私でございますか? どのようにでございましょうか、お嬢様」

ドロシー:
「それです!」

ジャック:
「? それ、とは?」

ドロシー:
「だから、それ。喋ってるとこ」

オズ:
「ジャックは、最初の設定では喋らなかったんだよ。インジケーターの反応だけでコミュニケーションをとる設定だったんだ」

ジャック:
「なるほど。初期型には音声生成プログラムが搭載されていなかったということでございますね」

ドロシー:
「まあ、ロボ的に言えば、そう…かな」

クロウ:
「どうしていっぱいおしゃべりするようになったノー?」

ドロシー:
「それはねー、いざ、その設定で話を進めようとしたら――」

「圧倒的に地味だった!!」

オズ:
「まあ、セリフが一切ないってことだからなあ」

ドロシー:
「そうなの! レオンが出てくる前、私とジャックとトトだけになるシーンがあるでしょ!? あそこ、私しかしゃべってないんだもん…!! 無理があるのよ! トトの『わん』だけじゃ、場を繋ぐのには無理があるのよ!! 私、えんえんと独り言、言ってるみたいになっちゃって…!」

オズ:
「確かにアプリみたいなスタイルじゃ間が持たないよな。映像か小説なら大丈夫なんだろうが…」

ドロシー:
「そう。そういうわけで、ジャックには喋ってもらうことになったの」

ジャック:
「さようでございましたか」

オズ:
「だが、なんで執事口調なんだ?」

ドロシー:
「うーん、これはもう、成り行きなんだけど…最初は、単に敬語なだけで、ここまで丁寧な口調じゃなかったのよ。でも、とある事情から、私の呼び方をいろいろ試してたところ、軽い気持ちで『お嬢様』って呼ばせてみたら、気づいたら執事モードに…」

ジャック:
「確かに、音声生成ソフト搭載直後は、お嬢様のことを『ドロシー様』とお呼びしていたデータが残っております」

ドロシー:
「そうなのよ! 昔はお嬢様じゃなくて、ドロシー様って呼んでくれてた…! ねえ、ジャック、今からでも遅くないのよ? 私のこと、ドロシーって呼んでいいのよ?」

ジャック:
「そのような許可をいただき、光栄に存じます、お嬢様」

ドロシー:
「だから、お嬢様じゃなくて、ドロシーだってば。ほら、言ってみて、ド・ロ・シー」

ジャック:
「承知いたしました。検討を進めてまいります、お嬢様」

ドロシー:
「検討する気、ないでしょ!」

オズ:
「従順にみえて、結構頑固だからなあ、ジャックは…」